知ってしまった以上は
2012年。
ちょっとずつ南関を買い始め馬の名前を覚え始めた頃、重賞戦線で活躍している牝馬がいた。
名前はアスカリーブル。
東京プリンセス賞、中央交流の関東オークス、時には牡馬を相手に数々のレースで活躍してきた。
当時は重賞くらいしか買わなかったけど、気付けばいつも活躍してた印象がある。
2020年1月。
冬の大井は昼開催なのであまりやらないのだけど、仕事の合間にふとメインレースの出馬表をのぞくと、懐かしい響きを思い出す馬がいた。
名前はアクアリーブル。
アスカリーブルにも初仔が生まれてたんだという感慨も束の間、彼女はこの1頭だけを残し亡くなっていたことを知った。
アクアリーブルは母がパスした桜花賞を鋭い差し切りで勝ち、東京プリンセス賞では余裕たっぷりに外目を回る横綱相撲で親子制覇。
直線の力強い伸び脚、併せる形になってからの再加速はシンプルにかっこいい。
これで3冠リーチ。
無敗の名馬も素敵だけど、敗北を知っている方が応援したくなる。
そして彼女に期待する理由はもうひとつ。
この東京プリンセス賞にいつも通り姿を見せたわずか3日後、突然亡くなられてしまった佐藤賢二先生の存在。
近年だけでもNAR年度代表馬のキタサンミカヅキやヒガシウィルウィン、東京ダービー馬ハセノパイロなどスターホース揃いの名門。
人気に関係なく大一番で結果を出してきたのは、きっと先生の技術の高さだ。
(実際アクアリーブルも、南関東に来てから5戦すべてで馬券になっているけど最高は3番人気)
まだまだ先生の手掛ける名馬たちを見たかった。
南関東のクラシックはすべて春。
ステップレースを使いながらS1ふたつを走り抜き、やっとたどり着く3冠めがトリッキーな川崎2100での中央交流。素人目に見てもハードだ。
実際交流競走になった2000年以降で地方馬の勝利はわずか3頭。直近でも2012年の母アスカリーブルまで遡る。
それでもお母さんも勝った関東オークス。
2冠まで育てた佐藤先生に、それを受け継いだ佐藤先生のお弟子さんである米谷厩舎。
派手なピンクのメンコも好きだけど、すっぴんみたいな茶色いメンコもきっと似合う。
もちろんどんな馬にも想いをこめて関わっている人がいて見えないドラマがあると思うのだけど、
知ってしまった以上わたしはアクアリーブルを応援したい。
無観客なのが歯痒いが、最後の1冠も彼女の頭上で輝くことを強く願う。